前回からの続きです。AT7Vをm97xeを中心に比較してみますた。
■AT7Vはエージングが終わってから他針と比較しやした(エージングは単なる耳の慣れなのか他要素なのか個人的にハッキリした回答はできやせんが、感覚上の変化は確かにあるので客観性を高めるには必要と判断してやす)。
昔にセールで買って新品状態で眠っていたPickeringのヘッドシェル、同時期に購入したWestern Electricのリード線がそれぞれ2セット分あったので、Shure m97xe、AT7Vに繋いで可能な限り同じ環境でテストを行ってやす。インプレは自分が感じた印象を誤摩化さずに書くよう努めてやすが、所詮は個人レベルのテストなのと、新しく買った製品に対する贔屓目もあるはずなんで、各自で判断して下さいです。
■m97xeもAT7Vもダンスミュージック用ではないので、まず一般的なDJ針と比較しやした。ボクや知人が所有していたNight Club E、Pickering 625DJ、Shure White Labelを、聞き慣れたLIVEraryの環境で試聴。
音源については、楽器(打ち込み or 生音)、音数、展開、音圧、盤質、ジャンル、年代などが異なるレコードを幅広くかけるようにやした。良音盤だけでなく盤質に不純物が入ったシカゴハウス盤や、スカスカのLPとかもかけるようにしてやす。ダンスミュージックでも年代によってマスタリングが違ったりするので、こういった辺りもなんとなく意識してやす。
これは現場でのサウンドチェックでも同じような考えでやってるんですが、幅広い音源をかけることでシステムの許容範囲や懐の深さが図れると思ってるからっす。例えば、マスタリングやカッティングの良いレコードばかりだとカートリッジが頑張らなくても綺麗に再生しちゃうこともありえるので。あと、このHPで何度か書いてやすが、Theo ParrishやJeff Millsなどのデトロイト系のレコードはエグイカッティングがされているので、トレース能力を図るには便利です(例えば、初期Night Club Eなんかは再生できないレコードがありやす。今のモデルは知りやせんが・・・)。
んで、これらのDJ針との比較では、Shure m97xe、Audio Technica AT7Vが解像度、定位、全体の音質バランスともに頭一つ抜けている印象でした。特に高域に関しては、明らかにDJ針の方は鈍っているので空間性やキレという部分で弱くなる気がします。
高域が出る=シャリシャリと思われがちですが、実は高域が出ないと低域のキレまで悪くなりやす。これは、バスドラムやベースにもアタック音(最初に鳴る部分)や以降の部分にも高域成分が含まれているからです。当然、残響音など微細な部分にも高域成分は関わってきやす。ピュア針で異常に上の周波数を再生しようとしているのはそのためです。
なので一聴した際に認識しやすいハイハットの印象だけで、音質を調整したり判断するのは危険っす。ボクはアナログっぽい音とは嫌味がないことだと考えてやすが、高域が鈍っているだけなのに丸みがあるアナログ的な音と捉える考えは嫌いですw
やっぱりDJ用針はスクラッチ対応できるようにカンチレバーを太くしたりコイルを多めに巻いて出力上げているので、音質という面では劣るような印象を受けました。ただ、針飛びや耐久性といった部分に関してはDJ針の方が上なので、使い勝手は捨てがたいものがありやすね。上記のDJ針も聴けないレベルじゃないので、個人の優先順位で選べば良いかと。
■ここからが本題。Shure m97xe VS オーテカAT7Vです。
Shure m97xe
再生周波数:20-22,000Hz
出力電圧:4.0mV
適正針圧:0.75g-1.5g
重量 : 6.6g
分離よりも音の繋ぎがしっかりした暖かみのあるサウンド。所謂スモーキーな音。生音が土臭く聴こえるのでJazzリスナーに好まれる理由はよくわかります。詳細は購入時のレビューも参考にして見て下さい。
長所
・埃、反響に強い(針先についた埃ブラシがスタビライザーの役目もします。埃まみれのレコードを再生しても針はほとんど埃がつかない構造。)
・どんな音源も嫌味なく再生する。汎用性が高い。
・針飛びしにくい
・耐久性が高い(バックキュー可能、適正針圧超えても3gくらいまでは大丈夫)
・アナログらしい音色
短所
・出力が小さいので、DJ使用するならリード線などのカスタムは必須
・パンチのある現代的な音ではないので、CDの音と比べると定位感や分離では劣る。
(ただ、m97xe自体が分離をさせずに音を固まりで再生するようなコンセプトなので、分離の良さとは別の深みはあります)
Audio Technica AT7V
再生周波数帯域:15〜25,000Hz
出力電圧:5.0mV
針圧:2.0g標準
質量:約6.2g
とにかくクリアで全帯域が元気に派手な音。スモーキーな鳴りのするShure m97xeや、解像度の高くないDJ針と比べると薄皮一枚剥いだくらいの印象を受けます。鳴りは情報量に富んだ現代的な色です。ネットではドンシャリというレビューを見かけたので心配してますたが、低域、高域だけでなく中域も充分出ているので、そういう下品な印象は受けませんでした。
解像度が非常に高いためリバーブ成分の再生力、低域の力強さなどは目を見張ります。特に、コンガなどの生パーカッション、ピアノ、ボーカル、ビブラフォンといった倍音成分やリバーブ成分がハッキリ出るような音は、「こういう鳴りだったのか!」と気付かされるくらい別世界の発見がありやす。
なにより一番の特徴は、スピード感のあるキレ。例えるなら、空間を日本刀でザクザク切っていくような爽快感。高域の音まで拾っているので、アタック音が強調されるためにスピード感や分離感が出させるしょうね。ギターのカッティング音、バスドラのアタック音、チョッパーベースの弦の震えなども、ハッとさせられます。
アナログ=丸みがある音・スモーキーな音と捉えがちな風潮を踏まえると、鳴りはデジタルっぽいです。もちろん構造はデジタルじゃないので、アナログの良さは充分備えてます。分離感、定位感などに限ればCDの鳴りに近い、高い再生力がありやす。ベルクハイン周りの音やら最近のサウンドセッティングを聴いていると、高解像度、高分離な方向へガンガン振るのが時代的に流行ってるっぽいですが、そういう意味では今っぽい鳴りで若い人にも好まれそうな音です。
長所
・圧倒的な解像度
・スピード感のあるキレ
・定位の再生力(3D的な鳴り)
・低域、中域、高域を高いレベルで再生してくれるのでパンチがある
・生音、ボーカルなどの複雑な倍音成分を綺麗に再生する
・音圧の低いレコードも元気よくGroovyに再生できる
・バックキュー可能(Shure m97xeやDJ針には劣りやすが、プレイには問題ないという印象です。旧イエローやLIVEraryで使用していたDJ針Stanton 680HPは頭出しでたまに飛んでたけど、それよりは少しまともなレベル。どうしても頭出しで飛ぶ時は、アンチスケーティングいじればほぼ大丈夫です。グニョグニョに曲がっているレコードもスタビライザーなしで再生してくれやす)
短所
・埃に弱い
カンチレバーが細いため埃が溜まると一気に音質劣化します。なので、プレイ前のレコードクリーナーでコロコロしてやるのは必須。針先クリーニングもたまにした方がいいです。コロコロしてれば60分くらいは大丈夫だけど、針先の埃は数枚単位でこまめにチェックした方がいいすね。
・プチノイズに弱い
盤面の音を繊細に拾うため、プチノイズや大きな傷についてはShure m97xeより目立ちます。ただ、気になるレベルは明らかに盤質が悪過ぎるもので(ユニオン評価で言えばC以下とか)尚かつドラムなどのないブレイク部分に限るので、普通にやってれば特に気にする必要はないかな。
保留点
・針飛び
401宅で一晩テストした際に、どうしても飛ぶレコードが2枚程ありやした。ただ、全く同じレコードを自宅で試したら問題なく再生していたので、タンテのセッティングはシビアになるのかも(たぶん水平に関わる部分だと思います)。マーシー宅やLIVEraryで数時間テストした際には、一度も針飛びはしなかったので、今のところはそこまで不満は感じてないす。
心配なのはクラブのように振動の多い環境でやったらどうなるかという点で、これはやってみないとわからないです。Shure m97xeはイレブンやWoalでも一晩中鳴っていたので全く問題なかったです。
・耐久性
バックキューとかできるので予想より強いという印象ですが、壊れるまで使ってみないとなんとも言えないので保留です。DJ使用なら半年超えれば合格だと思いやすが。Shure m97xeはDJでラフに使っていても半年は余裕で持ちます。
■ついでにカンチレバーも比較。
Audio Technica AT7V
Shure m97xe
Pickering 625DJ
AT7Vのカンチレバーはかなり細いことがわかりやす。これが高い解像度や瞬発力のあるキレに繋がってるのしょう。バックキューは問題なくできますが、物理的に考えてShure m97xeより耐久性が高いってことは多分ないでしょうね。
写真を取って初めて気付きましたが、m97xeのカンチレバーがヒドい汚れすねw 針先交換してから1年くらいハードに使ったので自然劣化もあるでしょうが、おそらく手の脂による錆びでしょうね。DJ中に針先の埃を手で取っちゃう時があるんで、今後は気をつけないとですね。まだまだ気付かされることがたくさんありやす。
■Marcy宅で帯域解析もしてみますた。AT7V、Shure m97xeをそれぞれRodec DJミキサー→卓ミキサー→RME Fireface400経由でPCに取り込んで、Logic上でwavesで解析しています。動画の出音はどちらもAT7Vですが、youtubeに再生するために圧縮しているので動画の音質自体はあまり参考にならないかもです。解析画面の参考にしてみて下さい。
サンプル音源は、音数や展開が多いものを選んでやす。
動画は、赤で囲った部分の動きに注目してみるとわかりやすいです。埋め込み動画は小さいので、youtubeのリンクをクリックして大きな画面で見た方がいいかも。
Audio Technica AT7V VS Shure m97xe Part1
音源:The Brat Pack/I'm never gonna give you up
左:Audio Technica AT7V
右:Shure m97xe
Audio Technica AT7V VS Shure m97xe Part2
音源:King Sunny Ade and His African Beats/365 is My Number
左:Audio Technica AT7V
右:Shure m97xe
高域の情報量、定位の広がり、低域の立ち上がり方など波形で見ても明らかに違いが出てますね。全体的な情報量はAT7Vの方が多いですが、部分的にはm97xeの方が拾っていたりする部分があるのが興味深いです。スーパーローに関しては、波形上だとm97xeの方が出ているように見えますが、聴覚上は明らかにAT7Vの方がズンズンいってやす。おそらくドラムやベースのアタック音が、前に出てるからなんでしょうか。
■総評としてはAT7Vは、圧倒的な解像度・広がりのある空間性・パンチのある音が魅力で、Shure m97xeは暖かみのある音質・どんなソースにも対応する汎用性の高さ・埃による音質劣化がほとんどない設計が魅力です。
どちらも音作りの方向性が全く異なるので、優劣については正直つけられないです。どちらの長所も両立できないので好みやシチュエーションでわけていくしかないでしょうね。こうやってオーディオ地獄にハマっていくと・・・
ちなみにマーシーは最初はShure m97xeの方が聴きやすいと語っていて、色々と試聴していくと解像度と音圧でAT7Vの方が優れいてるというコメントをしていました。ボクも同じ印象ですた。
安くて頑丈な針しか使ったことのない元B-boyの彼は「これが本当のレコードの音か」と、早速AT7Vの購入を考えてやした。
他にも何人かに聴かせましたが、総じて生音の再生に関しては笑ってしまう程の好反応がありやした。
面白かったのは、ヒップホップとかエレクトロのようなシンプルな構成の音楽が、恐ろしい音圧と解像度で再生されて新しい聴こえ方をしていたこと。A tribe called questとかマルコムマクラーレンが空間系に聴こえましたw 80sのダサイPopシンセやリズムマシンも、スカッと綺麗に再生してやした。最近のベルリン盤のような定位や音圧が計算されたハウスやテクノも、細かいオートメーションまでハッキリ聴こえるので真価を発揮してくれやす。
派手な音でなので飽きやすそうな印象でしたが、実際に一晩中何回か再生した感じでは、情報量が多く細かい音や展開まで聴こえるので、むしろクソみたいなLPでも音質だけでお酒飲めちゃいやす。マーシーと波形解析していた夜にパーティーに行く予定でしたが、彼がAT7Vの音にハマってしまい外には出ず6時間以上も連続試聴していたくらいです。
■ただ、AT7Vは埃や針飛びに関しては当然DJ針よりはシビアになるので、面倒臭いのは事実(Shure m97xeはリード線さえ変えてしまえば面倒はありやせん)。多分、現場で盤面掃除をしないDJが一人でもいたら持ち込むのは無理でしょうねw 音質を取るか操作性を取るかでしょうが、DJ針からの乗り換えなら下手にアンプやスピーカーを替える以上の音質変化がありやす。サブ針でもいいので1つ持っておくと確実にアナログに対する見方は変わると思います。
現時点でオススメの針を尋ねられたらShure m97xe、AT7Vをプッシュしておきます。どちらを購入しても音質に関しては、DJ針には勝てるクオリティーを持っているはずです。
また長くなってしまったorz 次回で最後にします。
≪ 続きを隠すYAMADAtheGIANT | 2010年08月13日 | Audio | コメント (5)
前回に針を替えて以来、2年ぶりに新しい針に乗り替えたのでレビューしてみやす。久々にガチのオーディオ記事っすw
レビューについては特徴をハッキリさせるために辛辣に書いている部分もありやすが、あくまで個人の感想なのと特定モデルの使用を否定する意図は全くないのでご理解を。稚拙な部分もあるかと思いますが、カートリッジ選びの参考になれば幸いです。
■事の発端は、2年以上愛用していたShure m97xeがカートリッジごと死亡した上に、交換針がついに生産中止になったこと。
メーカーページでnot available表示されてるし、季刊誌のアナログでも生産中止と明言されていたので確定かと。ちなみに交換針は日本精機宝石工業(JICO)が今後も生産してくれるそう。ネットで検索しても国内外に市場在庫はかなりあるし、カートリッジ本体はまだ販売されているのであと2年くらいは大丈夫っぽい。
購入した当初は「ピュア用の針をDJで使うなんて・・・」と言われたけど、よく頑張ったよ。音質、耐久性、設計ともに素晴らしい針でした。以前に書いたレビューを参考に購入した方も何人かいて、そういう繋がりがあったのも嬉しかったな。お疲れ様ですた。
壊れた時点ではShure m97xeをまた買い替えようと思っていたけど、そろそろ新しい音を聴いてみたいという浮気心に負けて新たなパートナー探しへ。
ちなみにShure m97xeはDJ Harveyも来日時にUreiミキサーと組み合わせて使っていたそうです。ヘッドシェル&リード線はオヤイデだったみたい。ただ、以前のレビューでも書いたようにShure m97xeとUreiとの組み合わせは丸くなり過ぎる印象があるので、今っぽいアレヒみたいな現代的な鳴りのミキサーに合わせた方がボクは好みです。実際、イレブンの際も柔らかい音色でした(もちろんクオリティー的には全く問題ないんで好みの差っす)。
ちなみに、以前リリースしたPureselfのライブミックスCDは、Allen&Heath xone 62+Shure m97xeの組み合わせで録音しています。
■針選びの条件は以下の通り。
1. 現行品であること(DJ使用ではいきなり壊れることがあるのと2台同時に使うため、替えが新品状態ですぐ手に入らないと意味がないので)
2. Shure m97xeと同等もしくはそれ以上の音質クオリティーであること
3. バックキューができること
4. 一体型でないこと(経験則でコンコルドなどの一体型タイプは、値段と品質が全く見合ってないモデルが多い印象を受けるので。リード線やシェルなどで調整ができないので。)
5. メーカーのスタンスや信頼性(カートリッジのようなマニアックな製品にこそ企業の姿勢や体力が反映されるのはずなので)
まず音質という点で、DJモデルは除外。DJ対象の針というのは、カートリッジ内でコイルを多く巻いたり(コイルを巻けば巻くほど出力が大きくなりやす)、スクラッチに対応できるようカンチレバー(針先を支える部分)を太くしているものを指しますが、どうしても音質は損してしまう傾向にある気がしやす。今までShure m97xeとDJ用針を比べてきた中でも、音質という点ではやっぱりDJ針は劣るなあという印象があったので候補からは外しました。
んで、ピュアオーディオ系の針で心配なのは現場での針飛びや長時間使用した際の耐久性になるわけですが、中箱〜大箱クラスでPAがいるようなところでは、常駐されている針に合わせてグライコやらプロセッサーのプログラムが行われていることと、箱の共振を踏まえて針圧設定されているので、自分の出番の際にいきなり針だけを替えることは実はあまりないんす(実際、クラブは閉鎖空間で爆音を鳴らしているので、フラットに聴こえても裏ではプロセッサーやらグライコでかなり音がいじられています)。もし針を替える場合は、オープン前のサウンドチェックに立ち会ってPAの方と一緒にセッティングを追い込むべきですが、そういう機会は年に何回もないので、現場における針飛びや耐久性についてはそこまで神経質にならなくてもいいかなと判断しますた。バーとか小箱なら出番の時だけサラっと替えちゃうこともありますが、そういう時は自宅環境と大差ないので家で使えていれば問題ないかと。
あと、ピュア用針は一度リリースしたら10年くらいモデルチェンジしないとかザラですが、いくら売れるからと言って毎年毎年新しいモデルが出てたり、同じ型でいくつもラインナップがあるDJ針を見ると「きちんと追い込んでからリリースしているのか?」と疑い深くなっている点もありやす。
あとDJモデルの針は、個体差が結構あるみたいで外れをひくことがたまにありやす。自分の場合は、以前にpickering 625DJを新品購入したら片チャンネルが出なくて交換してもらったことがあります。現行のStanton 680EVも、個体によってかなり出力差があるというのを複数の人から聞きました。
と、DJ針批判みたいになってしまいますたが、要はピュア用針を買いたかったというボクの嗜好ですね。ボク含めてオーディオ好きという人種は、例外なくノイローゼかパラノイアですから、精神衛生上、安心できるという点は何より大事なわけですw
■んで、色々と考えたあげく、選んだのがAudio TechnicaのAT7V。
Audio Technica AT7V
再生周波数帯域:15〜25,000Hz
出力電圧:5.0mV
針圧:2.0g標準
質量:約6.2g
・ネットや雑誌のレビューによると、AT7Vはオーディオマニアの間でも音質に対するコストパフォーマンスで高い評価を受けていること。
・ロングセラーモデルであること
・Shureと並ぶ大手老舗、国産、オーディオマニアにも浸透しているメーカーの信頼性
・オーテカ製品のクリーナーやイヤホンを愛用していて、地味だけど安く中身のある製品を作っていてユーザーのことを考えている印象があること
・VM型というMM型に対抗する技術をウリにしているので、Shure m97xeとは違った音質変化が見込めること
・ピュア用針にしては出力がDJ針と遜色ないこと
がこのモデルに至った理由です。1万円くらいで買えます。
ただ、このモデルをDJ使用している人はボクが調べた限り国内外で見つからなかったので、バックキューができるとか耐久性に関してはギャンブル。とは言っても、Shure m97xeもDJ使用している人は全然いなかったけど試してみたら普通に使えたので、あまり心配はしてませんでした。最悪DJプレイで使えなくても、レコードのデータ取り込み用としても使えるしね。DJオーディオはピュアオーディオの世界に比べると、ブランド名やスペック表に左右されてしまってまだまだ検証されてない部分が多い気ので、D.I.Y精神が発揮できるし面白いす。
■製品の善し悪しを見分ける際に、梱包は意外に大事。
カートリッジに付属しているケース
DJ用針だと替え針がたくさんついてたり梱包が異様に豪華だったりするモデルがありやすが、余計な所にお金をかけている可能性が高いです。1〜3万くらいの価格帯であれば、ピュアオーディオ用針の方が、質素な梱包が意外に多いです。AT7Vも厚紙の箱にカートリッジケースが入っているだけ。しかも、梱包されていたケースがヘッドシェルをマウントしたままケースとしても使用できるという優れもの。カートリッジケースって普通に買うと数千円〜1万くらいするので、これはかなりありがたい。
■良い機会なんで簡単にカートリッジの構造も説明しておきやす。きちんと仕組みを理解しておけばユーザーを舐めた煽り広告に騙される確率はぐっと下がりやす。無駄金を使わないためにはオーディオリテラシーは大事w
Via 林 正儀のオーディオ講座
表のようにアナログ用のカートリッジはMC型(ムービングコイル型)、MM型(ムービングマグネット型)と大きく別れます。これは磁石とコイルの位置がどこに設置されるか、つまり針先からの振動に対してまずコイルが反応して動くか磁石が反応して動くかという差です。MM型は磁石→コイルという並びなので構造上コイルを大きく取れるのでたくさん巻けば出力が稼げます。DJ針の出力が異常に高いのは、この構造を利用しています。当然、パワフルな音質がウリになります。ただし、MM型はShureの特許技術なので、オーテカのVM型のように独自技術で対抗しているメーカーもありやす。MM型と書かれたカートリッジは、みなShureにパテント料を払って使ってます。ちなみにNightclubでおなじみのコンコルド型やナガオカのDJ用カートリッジも構造は全てMM型です。
一方でMC型はコイル→磁石という並びになり、構造上コイルは小さくなり巻き数を稼げないため、出力は低くなりますが、繊細かつ高解像度な音質で高域の対応力などが優ります。ただ、カンチレバーも細いので、スクラッチはおろかバックキューさえ厳しくなります。
一般的にピュアオーディオの世界ではMC型の方が音質が良いとされていますが、MC型は異常に出力が低いので(DJ針の5倍〜10倍くらい小さい)、専用のフォノイコライザーが必要になってきます。なので、テクニクスのタンテにそのままMCカートリッジをつないでもDJ針と同じようには鳴りません。David Mancusoが使用しているとか言われる光悦なんかはMC針です。
ただ、ピュアオーディオ系の人が好むクラシックやJAZZと、僕らのいるダンスミュージックの世界では音質の捉え方や盤質の許容範囲が異なることや、出力が低く繊細に反応するというは歪みに対しても反応しやすくなるので個人的にはMC>MMという単純な構図を盲信してコンプレックスを感じる必要はないと思ってます。オーディオマニアでもMM型とMC型は併用している人が多いようですし、別の機材くらいに考えておけば良いかと。
んで、このような点を踏まえると、Shure m97xeやAT7Vはハイエンドな世界では入門機に位置しますが、DJ使用と音質を両立できるという点では最上位機種の部類に入るかなと思ってやす。
■ShureのMM型と双璧をなすVM型という技術ですが、これは左右独立したマグネット2つをカンチレバー元にV字に配置してやす。昔はShureのムービングマグネットという技術に色々対抗した製品が出てたみたいですが、今でも真っ向からケンカを売り続けている大手メーカーはオーテカくらいでしょう。こういう心意気にはやられます。(GradoもMC型に対抗してFB方式というカートリッジ内に円盤を配置した特殊方式を開発してやすが、DJモデルはMM型と表記されていたりすることもあって、よくわからんので今回は見送りました。ちなみにGrado社長のジョーグラドはオペラ歌手らしいですw)
VM型の基本構造
マグネットの位置と数に注目
①コイル ②コイルボビン ③ポールピース ④マグネット ⑤スタイラスチップ ⑥カンチレバー ⑦マグネットサポート ⑧ゴムダンパー ⑨振動支点固定サスペンションワイヤー ⑩振動系固定スクリュウー
Via 懐かしいスピーカー達
んで、VM型の音ってどうなのよ?って話になりやすが、ShureのMM型とはビックリするくらい異なるサウンドデザインです。
一言で言えばステレオ感、残響、分離感が強調されたパンチのある音色。鳴りとしては極めて現代的で一聴するとデジタルっぽい鳴りです。これがオーテカサウンドという所以なのかな。デジタルっぽい鳴りと書くと語弊がありそうなんで補足しておくと、分離や解像度がアナログにしては高いという意味です。アナログはどちらかというと、分離やステレオ感ではデジタルに劣る部分もありますが、VM型はCDに近い定位や派手さで再生してきます。もちろんアナログなので、低域のふくよかさ、倍音の美しさといったアナログの良さが消されるわけではないですが。
VM型の特徴をざっくり書きましたが、AT7Vの音質については後でもう少し細かく書きます。
■デジタルの話が出たのでついでに書いちゃうと、ピュアオーディオ界隈では既に「デジタルオーディオがレコード音質を超えた」と言う論調があるようです。んが、これはオーディオシーンの最前線を走っている化け物マニアの方々が、散々セッティングを追い込んだ上で24bit/192khzといったレベル(CDは16bit/441khz)で再生している世界での話だと思われるので、DJオーディオにこの論調を当てはめるのは危険っす。以前、プレク大好きさんともお話しましたが、「デジタルオーディオの音質を左右する肝は、微細な電源の揺さぶられ」にあるはずなので、どうしても多機能にせざる負えないDJ界のデジタルオーディオがアナログの音質を超えるのは、遥か先のような気がします。ボク自身も実感していますが、デジタル機材は多機能になればなるほど音が悪くなります。つまり余計な作業が増える程、常に電源が揺さぶられるからです(わかりやすく例えれば、PCで複数アプリを立ち上げて作業しているようなイメージ)。あまり大きな声では言えやせんが、最近話題になっている某CDJの最新機種も昔の機種の方が"音質"だけなら良い気がしやす。スペック表だけ見ると進化してそうだけど、そうじゃないのがオーディオの難しいところ。
ボクが未だにアナログでやってるのは、自分が触れた中では、デジタル音源がアナログ音源を超えて再生しているシステムを聴いたことがないのが理由です(ただ、タンテがハウってるとかそういうレベルでセッティングが甘いと、CDとかPCの方が綺麗に鳴る場合は当然ありやす)。
う〜ん、また長くなってしまった。。。
次回は、オーテカAT7VとShure m97xeの徹底比較をやってみやす。お楽しみに☆
YAMADAtheGIANT | 2010年08月09日 | Audio | コメント (10)
先日、以前に書いたCD-Rの記事をきっかけに仲良くなったPさんとオフ会しますた。その内容が、あまりにもDeeeeeeeepだったのでレポ。
■HP上でメール交換してから、内容・分量ともに下手なレポート以上のオーディオ談義を繰り返してたので、そろそろ会って飲みましょうというのが、ことの発端。
Pさんが、ハーコーな人種であるのはメールのやり取りでわかっていたので、実際は気難しい人かもなあと内心ビクビクしながら待ち合わせの居酒屋へ。んが、現れたのは酒のいける好青年で、まずは一安心。途中からマーシーも合流して、葉隠れ→Oath→マーシー宅と、場所を変え酒を足し続けながら、19時過ぎから朝の6時までひたすらオーディオ談義w この手の話に興味がない人なら間違いなく体調を崩すであろう高カロリー過ぎる内容で、マヂで笑いが止まらなかったす。あそこまで解放したヲタ話ができる機会なんてまずないす。
酒のつまみとなった主なテーマは、各所で熱い議論が繰り広げられているCDやデジタルオーディオにまつわる音質変化。オーヲタ上級者であるPさんの胸を借りながら、DJの立場からもDJ機材とかについても色々話してきやした。
■酒が進み打ち解けたあたりで、Pさんがバックの中をゴソゴソしだす。何かなと思ってると、手にはあのCD-R「太陽誘電CDR-63/570P」がっ!!!!以前の記事でも紹介しているようにCD-Rを掘ったことのある人なら名前くらいは知っている伝説のメディアだけど、実物はもちろん初めて見た。本人曰く「これ一枚でフランス料理フルコース食える値段ですからね〜。焼く時は手が震えましたよ」と。ブハハw
早速、マーシー宅にてブラインドテストすることに。方法は、オリジナルのCDとオリジナルをCDR-63/570Pに焼いたものを、順番を告げずに再生。正解を告げる前にどちらの音が良かったかの印象を確認。正直、自宅でもない環境でCD-Rマニアですらない自分に違いがわかるのかと、半信半疑だったけどビックリ。なんじゃこりゃ、明らかに違う!!!!
一聴しただけでまずボリュームも違うし(!)、中域〜高域にかけた伸びや残響音の広がり、アタックの立ち上がりなどが全然違う。当然、どちらがCD-Rかは知らない状態でこの印象を話しているので、少なくとも「高いメディアだから音が良いだろう」といった低レベルなプレシーボ効果は絶対ありえやせん。ボクが聴いた感じでは素人でもわかる差だったので、CDメディアやドライブによって音が変わるというのは認めざる負えないす(ちなみに、ボクはデジタルオーディオおける周辺機器やメディアに対する効果については、どちらかというと懐疑的な立場でした)。
んで、Pさんが信頼できると感じたのは、音が変わる理由について、権威やオカルトを盾に説明するのではなく、自らの科学的な検証を元に仮説を立てている点。
「もしコピーで01が変わるのであればPCの構造は成リ立たないので、デジタルデータが含まれたCDをコピーしてもデータが変わるわけがなく、よって音質の変化もないのでは?」というのは、誰もが抱える疑問ですが、彼の言葉を借りれば「デジタル神話はデジタルの世界だけでしか意味を成さない」ということ。これは単純なようで非常に深い。仮に01ベースでは変化がなかったとしても、A/D、D/A変換やメディアへの記録プロセスetc...といったアナログ世界が関係してくる諸要素は、音に影響を与えることもあると。
つまり、デジタルの世界内でやり取りしている時には見えないものでも、アナログ化した途端に表面化する可能性を常に内包していると捉えるとわかりやすいかも。仮説を証明するためにHDDの検証までしてるってんだから、完全に平身低頭ですねw
■結局、朝まで飲み続けても全く語り飽きることはなく、帰りの電車でも議論は続きますたw デジタルメディアや周辺機器の選択で音が変わる可能性をここまで詳細に説明できた人は、ボクは初めて見たので大興奮。マーシーも言ってたけど、金とって講義できるレベルでしょw これでもまだ20代ってんだから、40代とかになったらと考えると恐ろしい・・
ウェブで公表してしまうと荒れる程のショッキングな内容もチラホラあったので、皆まで書けないのが残念だけど、ボクは納得できる内容ですた(当エントリーはボクの理解に基づくので、もし誤りや誤解があったら文責はボクにありやす)。
価格.comにある書き込みでは、ヒントになるような書き込みがチラホラあるので、興味のある人は是非掘ってみて下さいな。ココの書き込みとかクソ熱いです。
■どの業界も似たようなもんだけど、試行錯誤や判断を行わず名のあるメーカーや高価な機材ばかりを取り揃えている"ファッションヲタ"は数いれど、現場を踏んでる"リアルヲタ"はホント尊敬に値しやす。過去に行った検証実験の内容とか聞いても、音に対する愛がなきゃ絶対できないでしょ。ポジション取りとか自慢が目的なだけの「わかってます評論」にはウンザリだけど、地道な検証努力や技術と向き合っている人はやっぱ信用できるわ。オーディオを突き詰めると電気の流れや空気の振動に行き着くわけで、それを精神論や権威主義で語るには無理があるしね。
んで、ダンスミュージックに代表されるような電子音楽は、再生を前提に作られているという点では他ジャンルよりもオーディオ要素が深く関わるのが面白いなあと再認識しやした。
■PさんだけじゃなくDJだとかPAだとかエンジニアだとかボクが敬意を払う人達に共通しているのは、対象と真摯に向き合う姿勢な気がしやす。クイズしてんじゃないんだからから間違いを恐れて誤摩化すのは愚かだし、試行錯誤しながら進むからこそ、その過程で対象に愛を感じていくんす。故に、技術だって突き詰めればスピリチュアルなものだとボクは思ってやす。同時に、プロセスを経ずに愛だけを叫ぶのは、中身を知ろうとせずに人を好きになるのと似た違和感を感じやすw
ま、オーディオとか音楽が好きじゃなかったら、おいしい酒にはありつけなかったわけで、こういう刺激が一番の財産なのは間違いないすね。
■まだ、興奮が覚めやらないので長々と書いてしまいますたが、PCDJやCDJといったデジタルDJ機器についても、有用できる情報満載でボクもマーシーもホクホクですた。ちょっとデジタル機材にも興味が湧いてきたので、時間と金が許す範囲で色々試していきたいと思いやす。
≪ 続きを隠すYAMADAtheGIANT | 2010年05月11日 | Audio | コメント (4)
■最初に悩んだのが、新発売したばかりのKorgのWavedrum。94年にリリースされてカルト化してプレミアのついてた電子ドラムのニューバージョン。旧バージョンは、キングクリムゾンとかが使ってやす。
楽器屋で触ってセンサーの繊細さと音色の良さにビビりやした。リムの感度が半端ない。。。しかも生太鼓みたいにヘッドの素材が変更可能。
んが、色々悩んだあげく
・midi端子がついてない
・音がやっぱりKorg臭w (リバーブとかフィルターが強め)
・叩く音がデカイ
という理由で最終的には↓を買いやした。
Handsonic 10
(HPD-10)
製品紹介ビデオ
handsonicは10の他に、15という上位機種があって3万円くらい差がありやす。
15も店頭で触りやしたが、ネットで言われているように確かに音は15の方が太く10は軽快な気がしやすが、これでダンスミュージックのバスドラムを組むってのは考えにくいので関係ないと判断。音色も10の方が音がクリアと言う人もいるので、印象の範囲かなと。
あとは、15はエフェクト用のコントローラーとか色々充実していてデカイ。midiで書き出せるなら、エフェクトはあまり必要ないし。。。膝に乗せて気楽に叩ける機動性を考えて10に軍配。
■昨日届いて早速ポコポコ叩いてますが、こりゃリアルっすね~。試しに友人とスカイプ中に、「コンガ買ったんだよね」と嘘ついて叩いてみたら生だと信じてやしたw。
ざっくり聴いた感じではBongo、Conga、タブラといったパーカッションの音色は、生に近く使えそうです。ビブラフォン、ハンドベル、ガムランといった鳴り物も、かなり良い感じです。TR808と909のドラムキットが分けて入っているというご愛嬌にはニヤリ。
■「生音の単発ショットを抜いて、MPCで叩いたり、ソフトサンプラーにアサインして打ち込めば同じでしょ」と考える人が多いと思いやすが、実際に触ると別物す(マーシーに相談したら最初はMPCで充分と一蹴してやしたが、デモ見せたら欲しがってやした。)
具体的に何が違うかというと、MPCの場合は1つのパッドに対してフィジカルに反応するのは、ヴェロシティーとタイミングくらいですが、ハンドソニックだと1つのパッドに対してヴェロシティーだけでなく叩く位置によっても音が変わります。しかも、ミュートやピッチ変化といった生音的な変化を細かく再現していて、ヴェロシティーカーブまで調整可能。要は、同じパッドでも叩き方で音が変化しやす。加えて音色自体は、個々にチューニングなどエディット可能という技術力。
MPCパッドより感度が高いので、指ドラム奏法でもパワフルなフレーズができます。卓上用のmidiインターフェースとかだと、こういうニュアンスは絶対出せないっす。
音色は、変な味付けの無くいじりやすそうです。midiがあるのでDAW上で編集や連動も可能。電子音楽をやってる人には至れり尽くせり。さすがRoland、わかってらっしゃる。
生パーカッションはそれなりの音を出すのに苦労するけど、叩けば間違いなく綺麗な音が出るのは楽しい。ドラマーやパーカッショニストも愛用している人がいるのも納得す。URや石野卓球さんとかもライブでも使ってるみたいっす。
■海外とかだと、パーカッショニストでなく生録環境も揃ってなさそうな無名アーティストのトラックに生パーカッションが綺麗に入ってたりして、どうやって演奏&録音しているのか前から疑問だったのですが、これ使ってる人は結構いそうな気がする。実際、聴いたことある音色がチラホラ入ってるし。サンプル音源とかもこういうのから取ってたりしてw
あとは、自宅で好きなだけ叩けるという点はデカイ。日本にいる以上、家でパーカッションを叩ける環境なんてまずありえないですが、これなら夜間の太鼓録りとかも余裕。
ハードだから、即起動→即ポコポコという感覚もストレスフリー。購入してからは、適当なアルバムかけながらポコポコしてやす。Ras Michaelみたいなナイヤビンギ系のダブだと、プリセットのパターンでハマるのでキモチいいです。
電子ドラムはシュミレーターというより単体で新しい楽器と言ってもいいほどの地点まで逝ってる気がしやす。所有欲をそそるおもちゃ度も申し分ないし。オススメです。
<おまけ>
検索してみるとハンドソニッカーは世界でも多いみたい。以下、お気に入りをご紹介。
■Bongowillie (HP)
レストラン、結婚式、BBQといったアットーホームな場所を中心に営業しているアーカンソー州のおっちゃん。この人はアコースティックに聴かせるのがうまい。
■CARPETFACE ( myspace)
CARPETFACE & AUDIBLEの片割れ。12インチも出してるみたい。
病的なテクニックが半端ないです。
Handsonicじゃないけど、コレ笑えやす。キッチンでブレイクビーツ。ガスコンロでリズムキープw
YAMADAtheGIANT | 2009年10月28日 | Audio, Recommend | コメント (0)
レコードと機材が増えたせいでモニタースピーカーは、やる気のないセッティングで放置してたのですが、ハンドソニックを買ったことだし家のセッティングを久しぶりにいじりました。
インシュレーターは、マーシーが使っていて良さそうだったので購入。6個で3,000円以下は安い。3個×2で配置すれば、1セットで2スピーカーいけやす。
1個400円くらい
スピーカーの台は重めのブロックで固定。園芸用品が充実しているホームセンター(ドイトとか)だと、御影石から色々と揃ってます。オーディオショップで買うよりも数倍安いです。僕は重めのコンクリにしますた。
確かに違いますね。小さい音でもハッキリ聴こえ、解像度が上がりやした。低音も安定してやす。今まで微妙に震えてた部分が震えなくなったので、騒音対策にもなってるでしょう。2発でやって5,000円以下なら大満足です。
ただ、そろそろレイアウト変更も視野に入れないといけない時期なんだろうなあ。
≪ 続きを隠すYAMADAtheGIANT | 2009年10月27日 | Audio | コメント (0)
日曜日は、ついに陸上自衛隊富士総合火力演習(通称 総火演)へ行ってきますた。総火演とは、静岡県御殿場市の東富士演習場で実施される最も人気のある演習で、戦車やヘリコプター、様々な火砲などによる実弾射撃を間近に見る事ができるというもの。
■自衛隊とオーディオの関係は根強く、DIYスピーカーやノアの方舟でおなじみのオーディオ評論家、故長岡鉄男氏のフェイバリット盤に自衛隊の録音が入っているのは有名です。
総火演と言えばナガオカ
演習の爆音は、瞬発力、音圧、定位感などで国内のオーディオ界では最高峰の再生ソースと言われてます。政権が変わると予算削減で、演習自体が中止になったり縮小するかもという噂もあったので、ついに初参加へと踏み切りやした。
長岡鉄男をして「国内盤では最高と断言できる。これを凌ぐどころか迫るものさえ出ていない。」と言わしめたというマニア垂涎のレコード。
「サウンド・ドキュメント 日本の自衛隊」2枚組(33回転)
76年富士総合演習場、野島崎沖、朝霧訓練場にて録音。
その魅力に取り憑かれた長岡鉄男は自ら録音もしてます。FM#FAN別冊『オーディオ・ベーシック』で抽選で100名にのみ配られたらしいCDはプレミア化してます。
陸上自衛隊・富士総合火力演習
1998年盤
01_最大レベルチェック
02_火力戦闘演習開始~敵機攻撃~戦闘ヘリ射撃
03_弾幕射撃~迫撃砲・りゅう弾砲
04_機動打撃
05_特科部隊の攻撃
06_92式地雷原処理車
07_74式・90式戦車の射撃
08_移動行進~演習終了
再発盤も出てやす。
陸上自衛隊富士火力総合演習
1999年盤
※エンジニア小川洋による99年度最新版に、98年度版の音源をプラスした音源
1. ’90式戦車の射撃(再生音量調整用)
2. 1998年総合火力演習/1999年総合火力演習
3. F4ファントムによる対地攻撃
4. 偵察部隊の行動と偵察ヘリ~輸送ヘリによる偵察車両の投入
5. 攻撃準備射撃~対戦車ヘリの射撃
6. ’79式対戦車誘導弾~’90式戦車の射撃~装甲戦闘車の射撃~攻撃前進支援射撃
7. 装甲戦闘車の射撃~戦車小隊の射撃~陣地変更~障害処理支援射撃
8. ’92式地雷原処理車の掃射~突撃支援射撃~戦車小隊の射撃
9. 機動部隊による戦火拡張追撃
amazonにあったコメントがオーディオマニアの自衛隊音源に対するキモチを良く表してた。
『世界でも数少ない実弾射撃の実音, 2006/1/18
By 音楽大好き "munch1891" (岐阜県) -
ジャケットの写真の長岡鉄男氏がとても懐かしく感じる。オーディオ評論家、長岡鉄男が物故してもう5年の月日が流れている。その長岡先生がオーディオ愛好家に最後に残してくれた貴重な実弾射撃のソフトだ。
このソフトをまともに再生させることはオーディオ愛好家に残された最後の高いハードルなのかも知れない。
どんなスピーカーを使ってもこのソフトの瞬発力のある音の再現は不可能だろうし、 その不可能に向かってオーディオ愛好家はいつまでもチャレンジしなければならない、 そう宿命づけられたのかも知れない。 』
■朝4時半に起床して御殿場へ。10時前に会場に入ると数万人の観客がッッッ!ミリヲタとオーヲタくらいしか来ないと思ってたら、大半が家族連れという光景にビックリ。
席に着くなり演習開始のアナウンスが会場に鳴り響き、F2戦闘機が雲の彼方から登場。機体の裏側がハッキリ見える低空飛行で想像以上の迫力に、「こりゃ本気だな」と一気にヒートアップ。
前半は主に兵器の威力を1つ1つ紹介するスタイルで、後半は実戦を想定した模擬戦という内容で、2時間あっという間に終わりました。着ているTシャツが揺れる程の爆風、アパッチの蜂の巣連射、フランジャーがかったロケットランチャー音など、富士山を背景にしたキャンパスに約44トン、約3億6千万円相当の火力がぶちまけられる光景は圧巻ですた。
演習の後は、そのまま展示会。演習に使われた兵器や車両に直接触ったり写真撮影ができますた。展示物の傍には自衛官が立ってるので、ここぞとばかりにミリタリーヲタが嬉々として兵器の性能など質問しまくりw 自衛官もこうした質問を想定しているらしく、ヘリの羽の重さや、戦車の装甲素材までかなり細かい所まで答えていたのが印象的ですた。
ボクも戦車の爆音で鼓膜やられねえのかなあと不思議だったので聞いてみたら、無線のヘッドセットやメットが耳栓のような役割をするので意外に大丈夫らしいです。ちなみにヘッドセットのメーカーはOkiだそうす。誘導弾ミサイルが一発6,000万円ってのもビビりました。
■ウェブで拾ってきたもんですが、実際の雰囲気は以下が参考になるかと。過去や別日のものもありやすが、基本的な流れは毎年変わらないみたい。
総合演習ダイジェスト
総合火力演習の裏側
■とはいえ、「すげ〜、やべえ〜」だけでは終わらなかったのは、事実っす。
小年時代に誰もが通るであろう軍隊や兵器に対する憧れ、圧倒的な音響に対するオーディオ好奇心がくすぐられる一方で、ミリタリープローモションが放つ毒抜きされた非現実感や嬉々としたミリタリーヲタから感じる違和感など、複雑な感情が交差しますた。
一緒に行ったMarcy達も同様のことを感じたらしいけど、共通した意見としては「色んな意味で無茶苦茶しよるな」と。 反撃のないシチュエーション、火力を落として安全性を確保した状態で、ニュースで流れるショッキングな映像に比べたら明らかにショボいにも関わらず、最後の方はちょっとヒイてましたからねw
この演習よりも派手なシーンはメディアでいくらでも見れますが、大型映画館ですら再生不能な音圧の説得力は言葉を超えたものがあります。頭で考えるのでも耳で聴くのでもなく肌で感じるというか。あんだけのボリュームで(当たり前だけど)割れることない低音は、他ではまず体験できないでしょう。今まで知識や想像力で補うしかなかった考え方も、少し変わりますた。改めて音の持つ力を再認識。
■2時間の演習はHDDレコーダーで全て録音していたので、早速家に帰ってから波形を確認。ひゃ~、数万人いた会場の話し声や場内放送がほとんど聴こえないレベルで録音してたのに、余裕でクリップしてる。。自衛隊の録音物には、レベルチェック用のトラックが最初に入っていたり、「再生にはご注意下さい」と注意書きがある理由がやっとわかりました。音すらも暴力的なんだと。
※最前列から数十mくらいから、Roland R09で16bit/44.1kHz wavファイル録音してます。クリップしてない爆発音もあったのですが、あえて"無茶苦茶な臨場感"が伝わるクリップファイルを上げてます。 戦車の型番はメモってなかったので失念す。今回は鑑賞メインだったので、録音状態も適当なんでご容赦を。
戦車砲撃1
試聴
戦車砲撃2
試聴
F2戦闘機 低空飛行
試聴
兵器によって明らかな波形の差が出てるのが面白いですね。特筆すべきなのは、ほぼ直角でピークに達する恐ろしい瞬発力。まさに2つの意味で"アタック"が強い。
■帰りは沼津港へ寄って海鮮三昧。やっぱ旅の疲れには生桜海老。
■帰ってから調べてたら、夜間演習もあるみたいね。一般公開してんのかな?
日本じゃ無理そうだけど、いつかソニックブームも体験してみたい。
■どう捉えるかは各自の自由にせよ、右も左も、オーディオやカメラが好きな人も、ミリヲタも、老若男女問わず一回は行く価値があるかと。色々と考えさせられる体験ですた。オススメです。
【初めて行く人用のメモ】
・入り口で荷物、IDチェックはなし。
・御殿場の駅には遅くても8時過ぎには着いていないとギリギリ。演習は10時から。
・会場はとにかく広いので、ギリギリで入ってもある程度の場所では見れる。ただし全体を見渡せるスタンドは早朝から入らないと無理かも。
・駅からはタクシーで行けば3000円くらい。慣れてる人は、「一緒に乗る人いる?」とかやってるので、一人で行っても乗り合いはできそう。バスの列は殺人的混雑。
・クルマやタクシーで現地に着いても、帰りの足はバスのみ。勝手に電話でタクシー呼ぼうとしても、会社同士で協定結んでるみたいで並ばないと多分無理。バスでもタクシーでも、炎天下で1時間は並ぶので、それなりの覚悟と用意が必要。会場が空く最後まで粘っても待ち時間は同じ。
・現地にある屋台は速攻で閉店するので、食料や飲料水は各自用意すべき。
・日焼け止め、タオル、シートは必須。山の天気は不安定なのでカッパもあった方が良いかも。
<おまけ>
■自衛隊アシッド
■Marcyが売店で買ってたものとは、、、
YAMADAtheGIANT | 2009年08月31日 | Audio, Classics | コメント (1)
アナログかデジタルかみたいな議論になるとレコードやPCについて触れられる機会は多いけど、CD-Rについてはあまり語られないような気がするので、これを機会にまとめておきやす。意外にCDにもDopeな世界があるんす。光る円盤に取り憑かれた男達のお話です。
■まずCD-Rについて語るのであれば、彼の名前は外せやせん。
森康裕(モリヤスヒロ)
貫禄の風格
1975年生まれ。CD-Rが開発された1989年頃からその魅力に取り憑かれ、「青春の大事な時期をすべてCD-Rに費やしてしまった。」と言い切る狂気の男。CD-R界の鉄人。趣味は、CD-Rメディアコレクションで常時4万枚をストック。名機CDW-900Eを愛するあまり30台以上も所有し、CDやDVDといった光学メディアの性能を測定し解析することに異常な執念を燃やしてます。大学で非常勤講師してた(今もしてる?)こともあるらしく、専門は半導体光素子(LD)を使用した植物栽培だそうす。
CD-Rに関する著書もあって、「CD-R/RW 活用とメディア選び」はボクも持ってます。
■まずは森氏による伝説の金言をピックアップ。これでCD-Rシーンの熱が伝わります。
「(現在のCD-Rメディアは)駄菓子やハンバーガーのように低価格になって品質も悪くなり、“心”がこもっていないものが沢山あります。それに比べ、昔のメディアは良かった。今と違って丁寧に作られているので品質も良く、音も段違いですよ」
「最近では、平気で直射日光の下で販売されていたりしますし、秋葉原などの専門店だとメディアのケースが積み上げられ、下が潰れていたりします。これじゃあ、ただでさえ品質が悪くなりがちなのにもっと悪くなりますよ」
「昔のドライブは作りも良く、メーカーもちゃんと設計していたのですが、最近の高速ドライブは、利益重視で音が悪い“へなちょこドライブ”ばかりで使う気になれません。」
■使用機材も半端ない。
森氏が使用している信濃電気製電源装置
良い電源こそメディアに命を吹き込むという氏の理想を体現している
水準器を使用してドライブは常に水平に
「CDW-900E」コレクションの一部。
写真は12台だけだが実際は30台以上あるらしい。
オリジナルの端子に自作ケーブルで最大16台を同時接続可能。
個人で16台も使って同時複製する機会があるんだろうかw
■歪んだ情熱は、ついに自らのブランド森メディアを作るまでに至る。製造後に1枚1枚すべて手作業でエラーチェックするという狂気の沙汰。
発売当時のインタビューで語っていた「欲しかった。作るしかなかった」という言葉が重い。
桐箱に納められた森メディア(DVD-R)
氏のメディア愛を感じます
夢を叶えた男の顔
そんな森氏が史上最高のメディアと評するのは以下の2枚。リコーもお気に入りみたい。
太陽誘電「CDR-63/570P」(左)
三井東圧化学「MTCDR-63」(右)
「他にも記憶に残っているメディアはありますが、強いてあげればこの2枚が最高でした。特にCDR-63/570Pは、素晴らしいメディアで、CDW-900Eと組みあわて記録したらそれは良い音がします。現在、この品質に近いメディアがあるとしたら、唯一、リコーのNY74+MAぐらいでしょうか……」
リコー「NY74+MA」
超高価プロ用CD-Rと称し1枚8000円
他にも一時期オーディオマニアの間では、高級CDが流行り色んなものが出てやした。最も高いCDとして有名なのは、エヌ・アンド・エフ社とトエミ・メディア・ソリューションズ社が共同開発した「ガラス製」のCDとかも有名。発売当時の2006年で98,700円という暴挙w
Extreme Hard Glass CD
注)Rではなくrom
正直、メディアごときで10万円というのはボッタクリと思いやすが、それほどメディアシーンに熱があったということなんでしょう。
■製造面からCD-Rの歴史を語る上で鍵となるのは、長野県にあった伝説の「千曲川(ちくまがわ)工場」。
CD-R黎明期には、CDの代替品としての意識が高かったせいかハイクオリティでメディア生産をやっていた傾向が強く、TDKの千曲川工場もOEMによる生産委託ではなく自社生産をしていますた。当時は、CD-R界の名ブランド太陽誘電と並んで圧倒的な信頼性を誇っていたそうな。
しかし、時代の流れから千曲川工場は大量生産系の工場にシフトしていきます(ちなみに現在の工場名は「千曲川テクノ工場」になっています)。
2005年に工場が閉鎖された当時のネットに残るログをあさっていくとCD-Rシーンに大きな衝撃が走ったことが見てとれます。千曲川工場がCD-Rの生産を止めた翌年の2006年3月8日にはTDKが記録型CD・DVD製品生産からの撤退を発表したように、以降CD-Rシーンはその場しのぎの消費メディアとして性格を変え容量、書き込みスピード、低コストをひたすら追求する道を歩んで行きます。
ちなみに千曲川工場には、賄賂課と呼ばれるキナ臭い部署があったという噂があったりと、ミステリアスな部分もあったみたい。
もちろん森氏も色んなインタビューで千曲川工場への想いを語ってます。
「個人的には、昔のメディアが一番欲しいです。というのは、低速用のメディアを設計しても、旧型のドライブにとっては未知のものであり、完璧なライティングは望めません。そう考えると私が、現在一番欲しいのは、TDKの千曲川工場で作られた1-8倍速対応の初期のタフネスコートです。これだったら、CDW-900Eとの相性も良いですし、現在のドライブでも問題が起きません。ひそかに復活してくれないかと期待しているのですが……」
実際に森メディアでは、日立マクセル製(水海道工場製)、TDK(千曲川工場製)、太陽誘電製(OEMは除く)しか扱わないと宣言し、既に廃盤となったプレミアメディアも高価買い取りまでしています。ちなみに、ボクはDJ用で使うCD-Rは森メディアで販売している太陽誘電の業務用CD-Rを使ってます。
■「完璧なライティング」を求める姿勢こそ、光学メディアシーンの根底に流れる美意識。ただ、これを音楽不在だとかフリークスの戯れ言として軽視するのは間違いで、創作物に対して誠意と忠実さと技術をもって接するという点でみれば立派な2次芸術であって、菅野沖彦氏が提唱するレコード演奏家論にも通じる哲学です。ちなみにこのHPでは何度も書いてやすが、ボクはDJもこの2次表現者に含まれると考えています(正確には表現者というよりも職人に近いと定義付けてやすが)。この考えを広義にあてはめていけば、リスナーやユーザーも3次、4次といった当時者となりえると思ってやす。コラージュやサンプリングといった手法が音楽、映画、文学などに与えた影響をみてもわかるように、受信という行為自体にも表現に似た価値が生まれるんす。
■森氏と並び、この業界で忘れてはいけないのは、ドライブディガーことYSS氏。ドライブの購入暦は200台を軽く超え、現行のドライブも随時検証、分析するドライブ界の掘り師です。彼の管理するCD-R実験室は、CDやDVDといった光学円盤メディアに関するアーカイブとしてはおそらく世界最強。2000年から今まで延々更新され続けてます。
以前は、YSS氏と森氏が同一人物という説まであったくらい。実はボクも一時期そう思ってましたが、どうやら違うみたいです。森氏とは対照的に謎のベールに包まれたキャラが渋いっす。
■既に衰退期に入ったシーンとはいえ、新たな世代も生まれています。最近、ボクが注目しているのは、価格.comに出没する『プレク大好き!!』さん。ハンドルネームが表すようにPlextorマニアで20代というCD-R業界ではフレッシュマンにして恐らく最後のオメガ世代。掲示板の書き込みを見ると、どうやら森氏とも知り合いらしい。ボクも森さんとお話してみたいんだけど、どうやったら知り合いになれるんだろうか。。。
特に、先日発売された高級CD-RドライブPlextorのPremium2Uについて、価格.comで繰り広げられたレビューは手に汗握りやす。発売されて数日で、ACアダプタが外注製でアンペアが低いことを検証し、電源部に関しては旧式(内蔵型)からグレードダウンしたという点を指摘、終いには今は無き63分盤CD-Rの音質について熱い想いが語られています。今、2009年ですよ。。w
■とにかくCD-Rシーンにいる人間は、強迫観念というかノイローゼに近い凄みを感じやす。オーディオマニアともまた違う匂いですね。エラー値の測定というネガティブ要素をひたすら計測することを求められ、一般人に理解されないという点ではピュアオーディオの比ではないはずなので、かなりの精神力を求められる世界であることは間違いなさそうです。
毎度のことながら長くなってしまったので、次回はドライブとかメディアについて語ってみたいと思いやす。
≪ 続きを隠すYAMADAtheGIANT | 2009年08月22日 | A/D, Audio, Classics | コメント (9)