弐瓶勉/ABARA(全2巻)
この人、大好きなんす。バイオメガの2巻が全然でないと思ったら、コレ書いてたのね。帯の『47,335,389秒ぶりの新刊!!』に思わずニヤリ。
内容は『BLAME!』の世界とは交わってないっぽいけど(ボクが気付いてないだけ?)、弐瓶ワールドなハードSF。第四紀連、検眼寮、刑兵部省 、奇居子、示現体、恒差廟といったおなじみのSFワーディングも満載。ヒーローもの(?)、舞台が限定空間、サイバースペースが出てこない、といったらしくない部分も少しあるけど、変態バイオメカとか建造物フェチみたいなノリは相変わらずなので充分満足。おそらく作品の毛色が多少変わるってのは、編集者の色にも影響されるっぽいよね。『BLAME!』の設定集とか読む限り、アフタヌーン時代の担当編集者はキテたはず。
表現にも仕掛けがあって、例えば擬音が手書きじゃなくタイプされてるんだけど、気になって調べてみたらココでうまく説明されてやした。以下抜粋。
『マンガでは劇中、発声以外のなんらかの音がでているときはオノマトペ(擬音語、擬態語)を描き文字として描くことでそれを表現するわけだけれども、この『アバラ』ではヒーローモードの超高速駆動をオノマトペで表現していた。端正な活字で描かれたオノマトペ。
バゴォ ドゴオオオオオ ビュッ ゴッ ゴッ
ヒーローとその敵役の化け物どもは、音よりも早く動いているのだから、そこで音(物理的な空気の振動)が生じても、音として機能しない(空気の振動が人間の耳に入って「音」として認識されない)。その瞬間は誰一人として「聞く」ことがない。
が、たしかに生じているはずの劇的な動き。炸裂する力の表象。
それを表現するために、このマンガでは活字を利用していた。それが平時に描かれる音(こちらはちゃんと手書きの描き文字で描かれている。)となんの説明もなく混在することによって、なんともいいがたい奇妙な違和感のあるマンガなっている。それは、読んでて面白かった。』
ん~納得。ホント、弐瓶勉って細かい演出好きだよなあ。
あと、巻末のクレジットをみてたら、諸星大二郎の名前があってビックリ。原作か設定で関わったのかな。画集では、フランスのSFコミック作家エンキビラルと対談してたし、人の繋がり方もセンスありそう。村上隆と繋がってたのはアレだけど。。。(昔、展示会みたいなのに作品提供してた)
海外評価も高いらしく、ウォシャウスキー兄弟(性転換したから姉弟?)がマトリックス制作時に声かけたり、ヘルボーイ映画版の制作スタッフとしてオファーがきたりと、ハリウッドからもラブコール続出とか。連載が忙しくて断ってるらしいけど。Marvel Comicsのご指名で、X-Menのウルヴァリン漫画も書いてたしね。ちなみに、作品名の『SKINT!』は爪出す音で、『BLAME!』は銃撃つ音らしいっす。どうりで辞書調べてものってないわけす。
今でこそ人気漫画家とはいえ、これらのオファーが来た当時は、アフタヌーンの新人作家に過ぎなかったわけで凄い出世だよね。アフタヌーンって金脈発掘するのうまいよなあ。
そのうち映画とかにも進出しそうだけど、『BLAME!』のOVAなんか出さなくていいので、金かけて実写化希望っす。クリスカニンガムとか合いそう。BjorkのPVに出てくるロボとかもろセーフガードだし(この人、日本漫画読まないとか言ってるみたいだけど、絶対影で読んでると思ふ)。
大友克洋、士郎正宗に続くワールドクラスなSF作家だと思うんで、まだ読んでない人は是非~☆
P.S.
『BLAME学園!』、『ネットスフィアエンジニア』 収録のアフタヌーン、『ZEB-NOID』収録のチャンピオンレッド持っている人いたら貸して下さい。読み切りのみでコミック化されないっぽいし、ヤフオクじゃプレミアついてるんで。。。
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