ユカタン半島を満喫した後は山脈地帯へ。
チェトゥマルを経由してジャングルの街パレンケへ。市街から乗り合いタクシーで20分も行けばジャングル地帯で、キャンプ場やゲストハウスが点在している。ボクはEl Panchanへ宿泊。
パレンケ遺跡とEl Panchanを結ぶ公道沿いには怪しいキャンプ場やら、変な奴が茂みに潜んでたりするので、ブラブラするだけで楽しめる。後で知ったけど、夜に行けばパレンケ遺跡はタダで侵入できるそうな。月明かりで見るピラミッドは楽しそう。夜は乗り合いタクシーなど移動手段がなくなるので、公道を数キロ歩く必要があるけど。
土地柄のせいかスピってる旅行者が急激に増える。
例えば、魔法杖みたいなのを持って裸足でウロウロしている白人女。落ちぶれた妖精みたいな格好で、目が会うと「私とあなたのサードアイがどうたら〜」みたいな話をしてきて、ヨガポーズみたいなのを強要された。
他にも目が合う度にタバコを求めて来る通称タバコクレクレマン(2日目から彼の前でタバコ吸うのはヤメた)、数キロ先まで聴こえる音で毎日数時間太鼓を練習しているタイコマンズ、ブヒブヒ言うだけのアホなイノシシなど多種多様な奴等がいた。
そんな中、ボクがよく遊んでたのは、ボロボロの格好でメヒコ中を放浪しているメヒコ人二人組。一人は太虫にそっくりなメキシコのフトム、相方は「はじめ人間ギャートルズ」に似た憎めない奴。メキシコの太虫は、他人からビールやらタバコやら何やらをごちになり、それを皆に振る舞うというゴチ王っぷりまで似てた。はじめ人間は、「ファッキングレイト〜」が口癖でいつもニヤニヤ笑ってる。
要は"バカ”という形容詞がぴったりな二人なんだけど、スピった話の時だけ顔がマヂになる。太虫は基本何言ってるかわからないんだけど、三位一体という言葉を教えたら日本人かと思うくらい綺麗な発音で覚えてた。
彼らはテント派で風呂にしばらく入ってなかったので、パレンケ最終日にシャワーがてら近くの滝に行く約束だったんだけど、当日にバケツひっくり返したような大雨で最後の挨拶をできなかったのが心残り。パレンケの後は、トゥルームで行われるレゲエフェスにあわせて北上すると話していたので、まだまだ楽しんでるでしょう。ユカタン半島はジャマイカが近いせいか、レゲエが人気でマッドプロフェッサーをはじめビッグアーティストもちょこちょこ来ているみたい。
彼らは最後に一緒に飲んでた時に、ボクの旅がうまくいくようにと、十字架のアクセや貝をくれた(この貝はもちろん捨てずに持って帰ってきた)。こういうメヒコ人の見返りを求めない優しさってのは、見習わなきゃな。ボクは全く信心深くないけど、、これをもらってから満席だった飛行機の席がいきなり空いたり、ヤバいパーティーを見つけたり、いきなり友人に出会ったりと確かにラッキーな出来事が増えた気がす。
■サンクリストバル・デ・ラスカサス San cristobal de las casas
いよいよ楽しみにしていたサンクリストバルデラスカサス。チアパス、オアハカ州に入るとインディアン文化の影響が色濃くなってくる。街並みも独特で、雑貨なども良い意味で洗練されてた。
到着日にバスターミナルから市街地へ向かって歩いていると、たまたまメリダで一緒に遊んでいたY君と出会う。彼はガテマラ帰りで、お互いのみやげ話に花を咲かせる。
サンフアン・チャムラ San Juan Chamula
サンクリストバルからクルマ1時間程の郊外にある小さな町チャムラ。先住民が多く住み、今でも昔ながらの文化を残している。特筆すべきが町の教会。
建物はメヒコらしい色使いとヨーロパ建築がミックスしたメルヘンチックで、どちらかと言えば小さな教会だが屋内がキテる。壁面は極めて質素で教会にはおなじみのヨーロッパ調の彫刻もなく、シンプルなトライバル模様が入った布が天井吊り下げられている。壁際には、何故か鏡を首から下げたキリストやマリアや天使といった奇妙な偶像がずら〜と囲み、床には牧草のようなものが隙間無く全面に敷き詰められている。あちこちで床に座った信者が無数のロウソクを立て、草の匂いと怪しい光に包まれてお経のようなものを唱えている。よくみると生きた鶏らしき鳥の首を締め、生け贄として捧げている人までいる(この教会で祈りを捧げると、色々な治癒効果があると信じられているそう)。キリスト教なのに、ここまで呪術的とは・・・
要は、古くから伝わる伝統宗教とスペイン侵略以降に伝わったキリスト教が、混ざりながら独自に発展した結果、この奇怪な光景を生み出したらしい。
メヒコはどの街でも教会がいくつもあるので、ちょっとじゃ驚かなくなってたけど、これはぶったまげた。地方から来たメヒコ人旅行者も怖いと恐れてた。
ちなみにチャムラ行きのコレクティボ乗り場の前にある大衆バーは夕方からやっていて、酒とつまみが安く、量も味も申し分ないのでオススメ。
前に寄っていたチェトゥマルという街でAVATARを見てたんだけど、まさか数日後にリアルアバターを見るとは。視界に入りきらない程の大自然、遠近感がおかしくなる程のデカさ。
下に小さく見えるボートの大きさを見れば、異常な大きさがわかるはず。
人面岩
苔が集まっているように見えるのは、実は全て木が密集したもの。
サンクリストバルは、町中のパーティーもセンスが良かった。
イタリアンレストランを深夜に空けてやっていたパーティー。トランスやテックハウスといったミニマルな音がかかっていて黙々とハマる感じ。旧イエローの右後ろ組よろしく右側の奥に一人で来てる奴が溜まってる。どの国も同じみたいだ。客層は若い人が多くDJのミックスレベルも高かった。
ある日、街をプラプラしていたら調子の良さそうな兄ちゃんからフライヤーをもらう。パーティーだと言うので手書きのアドレスをたよりに歩いていくと繁華街からはどんどん離れて人気がなくなっていく。夜も遅いし帰ろうかなと思っていると、民家の前に数人が溜まっている。フライヤーを見せると「そんな場所はねえよ」と言われて諦めかけた時、急に笑顔に変わって「嘘だよ〜ん。ウェルカム」と入れてくれる。どうやらホームパーティーのようだ。
中に入るとアジア人はおろか外人すら一人もなく、大半がドレッドというラスタパーティー。自分は小学生から髪型変わってないし、そもそも誰の知り合いでもないけど大丈夫だろうかと心配するも、中に入ればメヒコマナーで皆ウェルカム。偶然にもパーティースタッフの一人はケンジ君という日系メヒコ人だった(見た目はメヒコ人だけど、片親がメヒコに移民してきた日系何世かだそうだ)。不勉強で知らなかったけど、明治以降「榎本殖民団」など日本からメヒコへの移民は結構行われていたらしい。
写真はないけど、裏には大きなヤシの木がある庭があって、輪になりながら酒やらタバコを皆でシェアしている。外人だからといってジロジロ見られることもないし、変に気を使われることもなければ、気付くと輪に入ってるので自然に楽しめた。ここまで外人に対するアタリがない国って珍しいんじゃなかろうか。
多分100人は入ってたのでトイレは12時くらいで大惨事になってたけど、台所を改造したバーとかはしっかり機能しててオーガナイズもよくされてた。
かかってる音はセンスよく、人がいない時間はDopeなDub、ピーク時にはSoulやFunk、オールドスクールなヒップホップなどがプレイされていてとにかく黒い。メヒコはピーピーテクノとレゲトンの国だと思っていたので新鮮。
特に、スクラッチをガシガシしてくるDJが一人いて、彼にはとにかく踊らされた。ピークタイムに、Misirlou(パルプフィクションのあれね)がかかって、フロア全体が恐ろしいステップで踊り跳ねた時は「ラテンの血、恐るべし」と悶絶。
ミシェル・ウエルベックが「素粒子」で指摘しているように、ヒッピーが唱えたラブ&ピースという言葉の裏には時として思想やファッションをフィルターとした排他性が潜んでいるので、ボクはあまり好きではないけど、このパーティーに関しては真にラブ&ピースと言わざる負えない。
う〜ん、LIVEraryでは、こういうことがやりたかったんだよなあ。音質とか音楽性なら全く負けてないけど、あのロケーションと国民性には嫉妬。自然体で自由に遊べる雰囲気と日本の現状を比べてたら、うらやましいを超えてちょっと泣きそうになった。
こういうミラクルがあるからパーティーはやめられないす。
<参考>
Dick Dale & The Del Tones "Misirlou"
次回はオアハカ編です。