King is back «« »»土曜日は横須賀で

right.gif The Eye of the Lens

ラングドン・ジョーンズ/レンズの眼
サンリオSF文庫 1980年

前に羊頭書房で立ち読みしてから気になってた怪作。高くて買えなかったんだけど、ネットで安価で見つけたのでポチッと。

1972年に書かれたらしいですが、これカルト過ぎるでしょw 詩と哲学とSFをミックスして表向きは思いっきり文学してるんだけど、音楽や映画の手法をミックスしたりと実験しまくり。乱暴に例えるならボルへスやポーの幻想性に、JGバラードの狂気を加えた世界観というか。架空の作曲家による楽譜が出て来たり、話ブツ切りでアステカの太陽の絵が出て来たりとか、ぶっ飛んだ内容なのにイロモノ感は全くなく完成度が極めて高い。中身の濃さの割には、短編集でサクサク読めるのでオススメです。久々に度肝抜かれました。

裏表紙の意味不明な解説が、まさに雰囲気伝えてるかとw

『さて、ジョーンズの作品を紹介したい。収録作品5篇で共通しているのは時間の性質の追求だ。大時計に囚われた男は、もう一人のゴドーを待っている。今度はゴドーは乞食でも神でもない。時間のエントロピーを予感する黄昏だ。荒涼たる書き割りの中で不毛な性交をつづける男女も時間を遅らせるだけだ。次第に姿を消して〈笑い〉だけを樹上に残したチェシャ猫のように、見るものも見られるものもフェイド・アウトして〈見る〉だけが、神の視力を補正するレンズの眼だけが残る。それにしても神の死を迎えたばかりなのに、時間もまた死ぬのか? 神はどこだ、と叫んで灯を掲げたあの気狂い老人の脳裏を去来した心象風景に応えて死体剖検に及ぶべきなのか? ともあれ毀誉褒貶姦しかった新しいSFの一隅に咲いた仇花と早とちりしないでほしい。この作品集もまた、薄目をあけて起きようと伸びをしている思索小説(スペキュラティブ・フィクション)という巨人につきまとうあの馬虻の一匹なのだ。乞御一読。』

lang.gifLangdon Jones (1942-)

音大でクラシック教育を受けていて近衛騎兵隊の楽士を3年勤めたり、一方ではオランウータン研究者、時計学者(?)という経歴を持つ謎の人物。ニューウェーブSFのアンソロジーを監修したりしてるけど、自身では短編を数作書いてるだけの超寡作作家っぽい。正直、性格悪そうだし怖いすw

<おまけ>
日本版の表紙もいいけど、海外の表紙も◎。

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